【物理編】露出とは撮影素子に光を曝すことである。結果的に明るさの指針になる
露出オーバーと露出アンダー
自分がカメラを面白いと思ったのは、ひとつは物理としての面白さがあるのかもしれない。
F値1.4、2、2.8…はルートそのものだし、シャッタースピードを上げていくと見慣れた1024が出てくる(実際は丸めて1000表記)。
だがそのわりにはカメラを物理的な観点で検証したことがないため、まだ自分のなかで腹落ちできていない。ここでは色々なパラメータに関して物理学的なアプローチを実施し、よりカメラを理解することを目指す。
今回は露出である。
- 露出とは撮影素子に光を曝すことである。露出値(EV値)は露出量が半分になる毎に1大きくなる。
- EV値の変化量を通称『段』と呼んでいる。『1段分絞る』と『1EV分絞る』は同義である
- 露出補正を+1EVするというのは、カメラの設定としては-1EVしている
- 適正露出を基準として考えると、露出を少なくする(暗くさせる)ほどEV値が大きくなる定義が納得できる
- EV値は明るさを表す指針である
- 露出補正とは被写体〈主役〉の明るさ〈目的〉を明るく(暗く)するために 、カメラ〈脇役〉の露出〈手段〉を多く(少なく)するということである
- まとめ
露出とは撮影素子に光を曝すことである。露出値(EV値)は露出量が半分になる毎に1大きくなる。
露出値はよくEV値と表記されている。EVはExposure Value の略なのでEV値を単純に訳すと露出値値となってしまうが、日本語にはよくあることなので気にしない。
このEV値であるが、絞り値がF1.0、シャッタースピードが1秒の場合をEV0と定義し、露出量が半分になる毎に1大きくなる。
Wikiを見てみると『光量が半分になる毎に』と表記がされているが、この表現は実に巧みである。EV値はあくまでも露出の量であって明るさの絶対値を示すものではないからだ。例えば同じEV値でも昼間と夜間では当たり前だが撮影素子に曝される光量は異なる。だが前述の表現は〈相対的〉な表現であり、『光量が半分=露出量が半分』が成立するため間違っていない。
EV値の変化量を通称『段』と呼んでいる。『1段分絞る』と『1EV分絞る』は同義である
これはそのままである。絞りの話は別でするとして、1段分というのが〈量(amount)〉であり、絞るというのが〈方向(direction)〉である。
カメラの話は量や方向だけでなく、〈単位(unit)〉ですら混在している場合が多いので、かなり注意深く記述している。
露出補正を+1EVするというのは、カメラの設定としては-1EVしている
これの言っている意味がわかるだろうか。いや、記載の通りなのだが、方向(direction)が全く逆なのだ。
少し補足する。露出補正を+1EVするというのは+1EV分明るくするということに他ならない。言い換えると露出量を2倍にするということである(※ISO感度の話もあるのでこれですら正確な表現ではない)。
露出量が半分になる毎にEV値は1大きくなると定義されているので、露出量を2倍にするということはEV値を-1にするということである。
ここで一気に結論まで。露出補正を+1EVする = +1EV分明るくする = 露出量を倍にする = EV値を-1にする となり、いつの間にか方向が入れ替わる。
始めは自分を疑った。どこかで思い違いをしているのではないかと。でも、どうやら正しいらしい。
間違っていないとわかると、今度は定義そのものに疑問の目を向けた。明るくする、つまり露出を多くする方向にEV値としてマイナス側の定義をするのは頭がおかしいのじゃないかと。
でも、それも間違っていることに気づく。EV値の定義はカメラが主役ではないことを示唆しているのだ。
適正露出を基準として考えると、露出を少なくする(暗くさせる)ほどEV値が大きくなる定義が納得できる
写真を撮る場合、主役(目的)は何であろうか。カメラが主役と答える人はまれであろう。主役(目的)はあくまでも作画であって、カメラは脇役(手段)にすぎない。
となると、明るさの基準も作画に置くべきなのだ。
ここで『適正露出』という言葉がある。これは作画が自然な明るさで表現されている状態を示す。ここでも判断対象はカメラ〈脇役〉ではなくあくまでも作画〈主役〉であり、かつ基準も露出(exposure)〈手段〉と言いながらいつの間にか明るさ(brightness)〈目的〉の話をしている。
混乱するので適正露出を3Wで定義する。
適正露出とは
・Who(誰が判断?)
→見た人が
・Whome(誰に対して判断?)
→写真(被写体)に対し〈カメラではない〉
・What(何を判断?)
→明るさが適切であること〈露出ではない〉
対象がカメラ〈脇役〉ではないし、露出〈手段〉でもないことがポイントである。
このように整理すると、露出値(EV値)の定義として被写体〈主役〉が明るければ明るいほど大きくなる方が自然だということが わかる。逆に言うと、露出量が少なくなればなるほどEV値は小さくなるべきなのである。
EV値は明るさを表す指針である
ここでもう一つ重要なことがある。
適正露出を確保するために、被写体が明るければ明るいほど EV値としては大きくする(露出量としては少なくする)となると 、〈間接的〉なパラメータである露出量を示すEV値は〈直接的〉なパラメータである明るさの指針になるのである。
少し強引だが日焼けサロンに例えてみる。目標とする日焼け具合がすなわち適正露出である。
マシンAだと10分5回でこの目標に到達したが、マシンBだと10分10回要した。この場合、どちらのマシンの光がどれだけ強いか。もちろんマシンAの光の強度がマシンBより2倍強い。
つまり露出量(マシンにどれだけ身体を晒したか)により結果的にマシンの光の強さ(明るさ)が推定できるのだ。
調べてみると、明るさの定義であるルクスとEV値は一定の関係にあるという。
したがって、EV値は明るさを示すと単純に記載されているカメラ本も多いが、説明の簡略化という観点ではあながち間違っていない。
露出補正とは被写体〈主役〉の明るさ〈目的〉を明るく(暗く)するために 、カメラ〈脇役〉の露出〈手段〉を多く(少なく)するということである
結論を書いたが、やはり混乱しやすい。EV値は明るさを示し、EV値が大きくなるほど明るいとシンプルに覚えてしまう方が楽だと思う。
まとめ
露出と明るさは違うはずなのに一色単に語られている。また、露出量を半分(明るさが半分)にする毎にEV値は+1される一方で露出補正での1EVは明るくなる設定であるという2つの?をアプローチした。
つまり〈量〉と〈方向〉の考察である。
過程として〈主役〉と〈脇役〉、〈目的〉と〈手段〉を順序だてて整理することにより理解することができたと思う。これはEV値は明るさを示すという説明で終了するのも納得できる。
こんな細かい説明なんて誰も求めちゃいないのだ。
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露出とは撮影素子に光を曝すことである。露出値(EV値)は露出量が半分になる毎に1大きくなる。
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EV値の変化量を通称『段』と呼んでいる。『1段分絞る』と『1EV分絞る』は同義である
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露出補正を+1EVするというのは、カメラの設定としては-1EVしている
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適正露出を基準として考えると、露出を少なくする(暗くさせる)ほどEV値が大きくなる定義が納得できる
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適正露出を基準として考えると、露出を少なくする(暗くさせる)ほどEV値が大きくなる定義が納得できる
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EV値は明るさを表す指針である
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露出補正とは被写体〈主役〉の明るさ〈目的〉を明るく(暗く)するために 、カメラ〈脇役〉の露出〈手段〉を多く(少なく)するということである
↓今まで見た中で丁寧に書いてあるのはこれかなあと思う
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