理系パパのカメラ奮闘記

2児の父親。理系の視点でカメラを勉強します。

【物理編】F値(絞り値)はレンズの焦点距離を有効口径で割った値である。明るさは有効口径の2乗に比例し焦点距離の2乗に反比例するため、F値の1段は√2の乗算となる

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F値2.0と5.6の比較。今回はボケではなく明るさの話

 

F値(絞り値)によって明るさとボケ方が変わる。値としては1、1.4、2、2.8、4、5.6…と続いていく。これはカメラを始めたばかりの頃に覚えることである。

ここで初心者は当たり前のように『なんで1、1.4、2、2.8と中途半端な値が続くのか』という疑問が浮かぶが、それを丁寧に説明しているカメラ本は見たことがないし、もっと言えば求められてもいない。

 

ここではF値と明るさの関係を述べる(ボケは別途)

 

 

【定性話】F値(絞り値)はレンズの焦点距離を有効口径で割った値である。F値が小さいほど明るく、F値が大きいほど暗くなる

F値はレンズの焦点距離を有効口径で割った値である。どうして割っているかと言えば、それぞれの値に対し明るさの振る舞いが逆であるからだ。

 

この目次では定性的な話に言及する。

まず有効口径の話である。

レンズは大きければ大きいほどより多くの光を集めることができる。こちらは虫眼鏡を用いて太陽光で紙を焦がす遊びを想像すればいいと思うが、余計な式を持ち出さなくても感覚で納得できる。補足すると単位面積当たりの光の量が増えるため明るくなるというわけである。

一方で有効口径を分母に置いてあるためF値は小さくなる。

ということで有効口径を大きくすればF値は小さくなり、明るくなることがわかる。

 

続いて焦点距離の話である。

こちらはレンズの大きさと異なり、明るさの因子となる理由が感覚で納得できない。

が、こちらも中学レベルの理科で実は説明できる。

『レンズの公式』で検索みてほしい。作図した昔の記憶がよみがえってくる人もいるかと思うが、この公式自体は単に焦点距離が長くなると実像も大きくなることを示している。実像を表現するための光の量は変わらないため、単位面積当たりの光の量が減るため暗くなる

一方で焦点距離を分子においてあるためF値は大きくなる。

ということで焦点距離を長くすればF値は大きくなり、暗くなることがわかる。

 

要するに物理現象としては値と明るさが相反する振る舞いであったため、F値の定義に割り算を用いていることが理解できる。乗算したら明るさの指針として利用できない。

 

 

定量話】明るさは有効口径の2乗に比例し焦点距離の2乗に反比例するため、F値の1段は√2の乗算となる

今度は定量話である。

 

まずは有効口径であるが、こちらは説明しやすい。

どれだけ光を取り込めるかということなので、明るさの因子としてはレンズの径ではなく面積である。ここで円の面積はπr^2 (r=円の半径)となるため、半径を2倍にすると単位面積当たりの光の量が4倍となり、明るさとしては4倍になる。言い方を変えると、明るさが2倍になる半径は√2倍である。

同じように有効口径はF値の分母に置いてあるため、明るさは有効口径の2乗に反比例する

 

続いて焦点距離の話。

焦点距離が2倍になると実像が2倍になる。こちらも明るさとしては高さ(1次元)ではなく、面積(2次元)が因子となる。1次元の実像が2倍になるということは2次元の実像は4倍になるということである。単位面積当たりの光の量が1/4となるため、明るさとしては1/4となる。

つまり焦点距離を2倍にすると明るさとしては1/4倍になる。こちらも言い方を変えると明るさが1/2倍となる焦点距離は√2倍である。

焦点距離F値の分子に置いてあるため、明るさは焦点距離の2乗に比例する。

 

以上より、F値の1段は√2の乗算となる

 

まとめ

ここではF値と明るさの関係に対して検証した。

丁寧に説明するのは思った以上に困難で、これでも省略している箇所がある。

前述の通りボケは別の機会に説明したい(出来るのか?)。

 

  • 【定性話】F値(絞り値)はレンズの焦点距離を有効口径で割った値である。F値が小さいほど明るく、F値が大きいほど暗くなる
  • 定量話】明るさは有効口径の2乗に比例し焦点距離の2乗に反比例するため、F値の1段は√2の乗算となる

 

 F値と明るさの関係をある程度丁寧に説明しているのはこれかなあ。

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※今回は後で加筆修正すると思う。ちょっと説明がシンプルでない。

 

 

コラム

□その1

ガウスは史上最高の物理学者と言われることがある。かの有名なガウスの法則から始まり、ガウス平面、最少二情報などその成果には暇がない。

しかし、まさかレンズにまでその影響範囲が及んでいるとは思わなかった(ガウスのレンズの公式)。ガウス恐るべしである。

 

□その2

この領域に詳しくない自分からすると、明るさの指針とするにはF値の定義自体が不親切であると思う。シャッタースピードは値が大きいほど明るくなる、ISO感度も値が大きいほど明るくなるのであれば、F値も値が大きいほど明るくなるような定義にするべきだったのではないか。

 

また、平方根が出てくるのも頂けない。元々2乗が出てくるのがわかっているのだから、式自体に平方根の要素を取り入れ、算出結果はシンプルなものにすべきだったのではないか。

 

つまりF値の式としては以下である。

ありたいF値 = 有効口径^2 / 焦点距離^2

こうするとF1、2、3、4…と大きくなるとその分明るくなる、という説明でシンプルになるし、1段分の換算もシャッタースピードと全く同じになる。

 

一方でレンズ設計の立場になってみると、レンズ口径が最初のトリガではないことが推定される。

どんな画角にするか⇒どんな焦点距離になるか⇒その際に必要な明るさを確保するためにはどんなレンズ口径にする必要があるか⇒そのレンズはターゲットユーザーが求めている大きさ、重さ、コストに合致するか、という流れだと思う。となると、基準とする焦点距離を入力の分子に置いた上で明るさを規定するために有効口径で割るという定義もまあ納得できる。

要するに、設計側のパラメータ(焦点距離)を基準にするか、算出結果のパラメータ(F値)を基準にするかである。

 

カメラの歴史に詳しくないがゆえに色々考えることがあった。