ヒストグラムの見方を理解しよう
皆さんはヒストグラムの見方を正しく理解していますか?
「白つぶれ」や「露出アンダー」など露出に関して検索すると「ヒストグラムを使いこなそう!」とほとんどのサイトに書いてあります。
その通りでRAW現像する際にはかなり参考になるのですが、実際どこまで理解しているのかは微妙だったりします。
というのは何となくの理解で使えてしまうからです。
そこで今回はヒストグラムの見方を振舞から整理します。
- ヒストグラムで初心者にわかること
- ヒストグラムで初心者にわからないこと(わかりづらいこと)
- そもそもヒストグラムとは?
- ヒストグラムのカラーの振舞を理解するためには光の三原色(RGB)を思い出す必要がある
- 光の三原色とは? グレーはどう表現する? 薄い色は?
- カラーヒストグラムは色飽和の判定に利用できる
- 【補足】カラーヒストグラムは基本色被り判定には使用できない
- まとめ
ヒストグラムで初心者にわかること
まずはどのサイトにも乗っていて、かつ初心者にもわかりやすい振舞を説明します。
以下を題材にします。
右上にヒストグラムが配置されています。
右に偏っていると露出オーバー
ヒストグラムが右に偏っている写真です。
一目で明るいとわかりますよね。
左に偏っていると露出アンダー
続いてヒストグラムが左に偏っている写真ですが、こちらも暗いとすぐにわかります。
左右に偏っているとコントラストが高い
こちらは左右に偏っている写真ですが、コントラストが高いことがわかります。
(Lightroomの操作上コントラストを上げた状況ですが。。)
中央に偏っているとコントラストが低い
こちらは中央に寄っている写真です。
コントラストが低い、いわゆる眠たい写真です。
ここまではわかりやすいですよね。
これがなぜわかりやすいのかと言えば、ヒストグラムの説明が写真の振舞が完全に一致しているからです。
ヒストグラムで初心者にわからないこと(わかりづらいこと)
自分のような初心者がわからないのは、ここに色が絡んでくる場合です。
以下のカラフルな写真にします(写真としてはひどいですが。。)
こちらの写真の彩度を高めます。
どうでしょうか。
彩度が明らかに高まっているのに、ヒストグラムの山としてはむしろ低くなっています。
続いて彩度を低くします。
今度は彩度が低くなっているのに山の大きさはそれほど変わっていません。
その代わりと言っては何ですが青が右に寄ってきています。
このようにカラーが関わってくるとヒストグラムは途端に理解しにくい振舞になります。
では次の見出し以降でこの振舞を整理していきます。
そもそもヒストグラムとは?
そもそもヒストグラムは写真の分析に限った話ではなく、縦軸に度数、横軸に階級を取った統計グラフの一種です。
ではさらに、写真におけるヒストグラムの縦軸、横軸は何でしょうか?
写真におけるヒストグラムでは横軸はピクセル(点)の明るさ、縦軸はピクセル数を表します。
例を示します。
以下の白黒写真のヒストグラムを当ててみてください。
横軸が明るさ、縦軸がピクセル数ででしたよね?
この写真のピクセル(点)を濃淡ごとに並び替えると以下になります。
こんな感じでしょうか。
それでは実際のヒストグラムを確認してみます。
合っていますよね?
ちなみに一番右側の白飛び領域に大きな山が見えますが、これは背景が白であるためです。
このようにヒストグラムは何か特別なことをしているわけではなく、写真がどのように明るいかをグラフで表現しているだけです。
ヒストグラムのカラーの振舞を理解するためには光の三原色(RGB)を思い出す必要がある
カラーになるとなぜヒストグラムのカラーは理解しにくくなるのでしょうか?
それはグレースケールのヒストグラムは絶対値で表現されるのに対し、カラーはRGBの関係でしか評価できないからです。
例を示します。
なんてことはない、いわゆる緑の丸を載せただけの画像です。
ではヒストグラムを確認してみてください。
緑の丸ですがRBGのヒストグラムの高さにほとんど差はなく、明るさ(横軸)に差があるだけです。
ではここから彩度を下げてみます。
彩度を下げても緑は高さも位置もほとんど変化していませんが、赤と青が右にスライドして緑に重なろうとしています。
今度は彩度を上げてみます。
彩度を上げても緑の明るさ自体(横軸)自体はあまり変わっていません。
それよりは赤と青が大きく左にスライドしています。
彩度が絶対値ではなく、RGB(レッド/グリーン/ブルー)の関係でしか評価できないということが何となくわかったでしょうか?
では、そもそもRGBって何でしたでしょうか?
そうです、ヒストグラムのカラーの振舞を理解するためには誰もが知っている光の三原色(RGB)を思い出す必要があるのです。
光の三原色とは? グレーはどう表現する? 薄い色は?
光の三原色は?と質問されて答えられない人はあまりいないと思います。
以下に概念図を示します。
ここで質問です。
白はどう表現するのでしょうか?
この絵で一目瞭然ですが、レッド/グリーン/ブルーを均等に混ぜると白になります。
ではグレーはどうでしょう? 赤の薄い色は?
この質問に対する回答となると細かい話をするより、ディスプレイなどで採用されているカラーモデルをベースに説明してしまった方が手っ取り早いです。
以下に緑の明度、彩度を振った図を示します。
横軸が彩度、縦軸が明度です。
先に記載してしまっていましたが、RGB値の最大値は255(0も分解能に含めるので2^8 - 1)です。
フルカラーが約1667万色というのを知っている方も多いと思いますが、実はこの値から来ています(同じく分解能は256なので、256×256×256=16777216)。
これで先ほどのクイズの答えが想像つくでしょうか。
グレーはRGB値を同一にしたまま値を小さくしていけば表現できます。
同じく薄い色も、例えば緑であれば赤と青の値を一定にしたまま赤の値を小さくしていけば実現できます。
前提が長くなりましたが結論です。
カラーの明るさはその色自体を明るくしていけば実現できます。
一方で彩度を高めるためには、その色自体というよりはその色とその色以外の相対値を大きくする必要があるのです。(注1)。
ひとつ前のヒストグラムの振舞はこれを示していたわけです。
カラーヒストグラムは色飽和の判定に利用できる
結局のところカラーヒストグラムはどのように利用すればいいのでしょうか?
結論から申し上げるとカラーヒストグラムは色飽和の判定に利用できます。
こちらは彩度を+40したものです。
赤のヒストグラムは中央よりやや右に寄っているだけですが、実はこれも色飽和を起こしています。
赤を強調するために緑および青を左にスライドさせようとしているのですが、青の持って行き先がなくなっています。
このようにいずれかのヒストグラムが左端または右端で山を形成している場合は色飽和により大なり小なり諧調が失われているため注意は必要です。
注意と言ったのはそれが悪いとは限らないからです。
【補足】カラーヒストグラムは基本色被り判定には使用できない
こちらのヒストグラムを見て、皆さんはどのように思いますか?
青が右に寄っているから色温度が低すぎる?
いえいえ、こちらは単純に被写体に青が多いだけです。
一番最初の写真を再掲しただけでした。
このようにカラーヒストグラムは基本的には色被り判定には使えません。
もしあなたが色の比率を見てカラーヒストグラムの分配を想像できるなら別ですが、カラーヒストグラムに踊らされてホワイトバランスが崩れるのは本末転倒です。
まとめ
ヒストグラムでは横軸はピクセル(点)の明るさ、縦軸はピクセル数を表します。
ゆえに
・明暗(露出オーバー/露出アンダー/白飛び/黒つぶれ)
・コントラスト
・色飽和
の判断に利用できます。
私ができるアドバイスは「ヒストグラムは利用しても利用されるな」です。
あくまで自分が納得できる写真にするための手段としてヒストグラムを利用すべきであって、ヒストグラムのために写真を調整するのは本末転倒です。
黒つぶれや白飛びが悪いとは限らないのですから。
↓一番最初の写真はCANON EOS Kiss Mで撮影
↓それ以外はα6400で撮影
↓ レンズはSEL35F18
※注1
「彩度を上げる」という行為はRGBの最大を保持したまま他の色を下げていくと理解したのに、彩度を上げるとなぜかその色のヒストグラムも変化する。
この振舞は色空間(RGB/HSV/HSL)の違いと分かったが、それは別の機会で。
それにしても「カメラって面白いなあ」から何が悲しくてカラーデザインまで調べなくてはいけないのか。